排水管の中は、下水の臭いや害虫の通り道です。それを室内に入れないのが排水トラップ、 トラップの水(封水)を守るのが通気管です。この2つはセットで理解すると覚えやすくなります。

建築基準法施行令129条の2の4第3項2号も、排水の配管設備には「排水トラップ、通気管等を設置する等衛生上必要な措置」を講じるよう求めています。

排水トラップの役割

トラップは、排水の通り道の途中に水をためて水のふた(封水)をつくる部分です。 封水の深さを封水深といい、浅すぎても深すぎても困ります。

封水深が 起こること
浅すぎる 蒸発や管内の圧力変動で、すぐに封水が失われる(破封)
深すぎる 流れが弱まり、自浄作用が落ちて汚物がたまりやすい

このため封水深には上限と下限が定められています。数値は告示で確かめてください。

トラップの種類

分類 例 特徴
管トラップ(サイホン式) Sトラップ、Pトラップ、Uトラップ 小形で自浄作用がある。Sトラップは排水が下向きに満流になりやすく、自己サイホン作用を起こしやすい
非サイホン式 ドラムトラップ、わん(ベル)トラップ ドラムトラップは封水の量が多く破封しにくい。わんトラップはわんを外すと機能を失う

二重トラップは禁止

1本の排水経路にトラップを直列に2つ設けると、間に閉じ込められた空気で流れが悪くなり、かえって封水が不安定になります。 「二重にすれば安心」ではなく、二重トラップにしないのが決まりです。

封水が破れる6つの原因

原因 何が起きるか 主な対策
自己サイホン作用 器具自身の排水が満流で流れ、自分の封水を引き出す 各個通気、満流になりにくい器具・トラップの選定
誘導サイホン作用(吸出し) 他の器具の排水で立て管などが負圧になり、封水が吸い出される 通気管を設ける
はね出し作用 管内が正圧になり、封水が室内側へ吹き出す 通気管を設ける
毛管現象 トラップのあふれ部に掛かった毛髪や糸くずを伝って封水が流れ出る 清掃
蒸発 長く使わない床排水などで、封水が蒸発してなくなる 定期的な注水、補給水の仕組み
運動量による減少 強風や急激な流れで封水が揺すられて減る —

大事なのは、通気管で防げるのは圧力が原因のもの(サイホン作用・はね出し)だけということです。 「蒸発による破封は通気管で防げる」という記述は誤りです。

通気方式の違い

方式 しくみ 特徴
伸頂通気 排水立て管の頂部をそのまま延ばして大気に開放する 構成が簡単
各個通気 器具のトラップごとに通気管を設ける 通気の効果が最も高く、自己サイホン作用も防げる
ループ通気 排水横枝管の最上流の器具排水管の接続点のすぐ下流から通気管を立ち上げ、複数の器具をまとめて守る 各個通気より簡単
結合通気管 高層建物で、排水立て管と通気立て管を途中の階で接続する 立て管内の圧力変動を逃がす
通気弁 管内が負圧のとき空気を吸い込み、正圧のときは閉じる 臭気を室内に出さない

ループ通気の立ち上げ位置は定番のひっかけです。最下流から立ち上げると、上流の器具が通気されません。

通気管の施工の原則

  • 横走りの通気管は、その階の器具のあふれ縁より高い位置で配管する(器具があふれたとき汚水が通気管に入らないように)
  • 通気管の末端は、窓や外気取入口から離して開口する(臭気が屋内に入らないように)
  • 雨水排水立て管を通気管と兼用したり、連結したりしない

阻集器と間接排水

排水管を詰まらせる物や危険な物は、トラップの手前で取り除きます。

阻集器 対象
グリース阻集器 営業用厨房の油脂
オイル阻集器 自動車整備工場・給油所のガソリンや油
毛髪阻集器 理容・美容室の毛髪
砂阻集器 土砂を含む排水
プラスタ阻集器 歯科技工室などの石こう

また、冷蔵庫・水飲器・空気調和機・給水タンクのオーバーフロー管などの排水は、排水管に直接つながず、いったん空間を切ってから受ける(間接排水)。 給水側のクロスコネクション禁止と同じ「きれいな水と汚れた水を直接つながない」発想です。 排水管が詰まっても、汚水が食品や飲料水の側へ逆流しないようにするためです。 洗面器のような衛生器具は、トラップを介して排水管に直接つなぎます。

覚え方のコツ

  • 「トラップは水のふた、通気はふたを守る空気の逃げ道」
  • 「サイホンは負圧、はね出しは正圧、どちらも通気で防ぐ。蒸発と毛管は通気では防げない」
  • 「Sトラップは自己サイホン」「わんを外すとただの穴」
  • 「トラップは1つ、二重は禁止」
  • 施工後の確認は満水試験(保持時間は最小30分)。配管の試験を参照
  • 「ループは最上流のすぐ下流から」「高層は結合通気」
  • 「厨房はグリース、整備工場はオイル、歯科はプラスタ」

破封の原因と対策の表は、そのまま選択肢の正誤判断に使えます。原因と対策をペアで言えるようにしておきましょう。